とある古本屋の話です。とにかく店舗が大きくて、膨大な量の本が置いてある。どんな分野の本も網羅されていますね。少し前に良く売れていて、自分でも買おうかどうか迷ったことのあるような本が100円の棚に並んでいたりすることもよくあるので、時々は顔を出しておかないと、と思います。そんなラッキーが度重なると、普通の本屋さんで、定価で本を買うのが段々、馬鹿らしくなってきたりもします。まあ、有り難いと言えば、有り難いことですが。
しかし、こちらが本を売る立場になってみると、なかなか憎い相手に変貌します。今まで、何度も本を売ったことがありますが、最も大量に売ったのが、引っ越しの時でした。ダンボール箱で7箱くらいを車で持ち込みました。時間があれば、本を分野別に分類して、もっと高く買ってくれる可能性のある古本屋さんを探して、ということが出来たのですが、その時は急いでいて、一括で頼んだわけです。
そして、其の時の金額の少なさにはさすがに唖然として声も出ませんでした。たしか、全部で数百冊の本が、640円とかそんな値付けをされたのです。中には古書価格が千円以上する本も何冊か含まれいましたし、私は5千円以上には絶対になると思っていたのでショックでした。しかし、引っ越しの途中で持ち帰るわけにもいかず、涙をのんだのでした。
まあ、でも安く買い取っているからこそ、こちらも100円でいい本が手に入ったりもするので、オアイコですかね。
それから、古本屋さんといえば、専門街の神田などを別にすると、街の商店街の片隅に狭い間口で、中が鰻の寝床のように細長く、奥の帳場の書見台の前に、どうにも煮ても焼いても食えないような頑固親父が、老眼鏡の奥からじっと客の様子を窺っている。そんなイメージがありますが、私の住んでいる街にも、まさにそんな古本屋さんが一軒あります。一ヶ月に一回位の割で、冷やかしがてら店を覗きますが、どうも、一ヶ月くらいで積まれてある本のラインナップには殆ど変化が無いようにも思われ、どのくらい売り上げが有るんだろうかと、人事ながら心配になったりもします。それでも、時々は、BOOK OFFなどでは絶対に見つからないだろう掘り出し物に出会ったりしますから、あなどれません。